幼少期のお受験や早期教育に対する批判的な意見の一つに、無理な詰め込みをしているというイメージがあります。理解は後回しにされ、ひたすら知識を詰め込む手法は、ゆとり教育が施行された1980年度以前の教育方針をイメージさせるものだからでしょう。
そうした詰め込み教育のマイナス点を無くすために始まったのがゆとり教育です。ところが、「ゆとり世代」という、この時期に教育を受けた世代を表す言葉が決してプラスイメージで使われないことからも分かるように、ゆとり教育もまた、プラスの効果をもたらすものではありませんでした。
ゆとり教育がマイナスの効果をもたらしている、とされたのは2003年と2006年に実施された「生徒の学習到達度調査(PISA)」によってでした。
現代社会では、このPISA型学力が重視されています。では、このPISA型学力とはどういった能力なのでしょうか。そしてこの学力によってどのような能力の育成が進められているのでしょうか。
ゆとり教育のマイナス点とは
知識詰め込み型の教育に問題があり、その反省から始まったゆとり教育。文科省は「生きる力」を育むことを目標とし、週完全5日制が始まったのもこの頃です。学習内容も大きくカットされ、「総合学習」の時間が設けられました。
しかし、このゆとり教育は学力の低下を招いたとされ、総合学習の時間はその後削減されます。
大幅に教科を学ぶ時間を減らし、競争を排除する手法が野心や競争心を失くし、協調性を持ち合わせない世代だとの認識が生まれたのです。
詰め込み教育とゆとり教育、どちらが良かったかを決めることはできません。そのどちらにもメリット・デメリットがあるのです。
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学習到達度調査(PISA)が明らかにしたもの
経済協力開発機構(OECD)が加盟国を対象に3年ごとのサイクルで実施する学力調査(PISA)は、15歳を対象に実施されるものですが、ゆとり教育導入後の試験結果が2回立て続けに急落しました。これはゆとり教育が原因とされたのです。
その後、2011年に施行された新学習指導要領では、知識を活用することで思考力や判断力、表現力を身に付けることを目的とされました。この教育改革が功を奏し、2009年にはPISAの調査結果では読解力が大幅に改善されたのです。
PISAは、授業で習ったことではなく、得た知識を使い、実生活においてどれだけ活用できるかを問うものです。国語や数学といった教科でのとらえ方ではなく、「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」といった各活用能力に注目します。
新指導要領では、このPISAが求める活用能力、つまり「PISA型学力」の育成を目的としているのです。新指導要領に基づいた学習はそのままPISAに対応するということにつながるのです。
PISA型学力を育成することで身に着けられる能力とは
以前の詰め込み型教育では画一的な指導に偏り、決まった事しかできないようなマニュアル人間が育成される不安があり、ゆとり教育では野心のない、協調性に欠けた人間が育成される事が予測されました。そこからの反省点を踏まえ、現代社会で求められるのは、自ら考え決断できる問題解決能力を備えた人材です。活用能力に焦点を当てたPISA型学力を育成することでそうした能力を育成することができ、望ましい人材がたくさん育っていくのでしょう。
どれだけ知識を保有しているかという暗記力よりも思考力を持っているような人材の育成ということです。
こうした動きに合わせ私立中学の入試にPISA型学力を測れる適性検査型を採用する学校も増えてきたようです。
PISA型学力とは?現代社会が求める、子ども達が今身に付けるべき能力 まとめ
- 詰め込み教育の対応策として始められたゆとり教育は、学力低下を招いた
- PISAは得た知識をいかに活用できるかを問うもの
- 現代において求められるのは、問題解決能力をもった人材
国が教育方針として掲げ、学校教育のカリキュラムに組み込まれたものは、個人で受ける受けないを選ぶことはできません。ですが、子どもたちへの教育は、学校だけに限定されたものではありません。
本来教育とは色々な面を持ち、様々な方向から影響を与えていくものです。大事なことは、新しい情報を常に手に入れて、親や教師が必要に応じてアドバイスや情報提供をして、それらの情報を子ども自らが活用できるような環境が整っている状態が最良なのではないでしょうか。そうした親や教師など周りの大人の姿をみて、子ども達は信頼感をもって、自らの持つ知識や能力を活かせる人材へと成長していくことでしょう。